残照

研究所からの連絡は北里新三郎が期待した日に来なかった。
数日が空しく過ぎた。
---もしも早まった考えで結果が悪い方に出たら・・・

追い詰められ、研究者として望んだこととはいえ貞淑な妻を装い不貞を働いたことを責め手元から去りゆく結果を作ってしまうと思うと後悔の念が先に立った。
夢にまで妻に向かって誰と寝たのだと激しく追及する自分がいる。
誰にも渡したくないほど恋しい妻だからこそ、その不貞が許せない自分だが そうなると子供たちまで一緒に追い出すことになる。

顔かたちが似ないまでも北里新三郎の胤だったと結果が出て欲しいと願った。
10日が過ぎ新三郎は研究所に向かった。研究所に強引に問い合わせ、それならお話できるところまでなら説明しますと言われたからだった。
「どうぞお掛け下さい」

「改めてもう一度お聞きしますが、最初に意思と変わりなく結果をお聞きになりたいですか?」
「・・ええ、それは・・」
北里新三郎は目の前が暗くなった。聴き方によっては言葉のあやかともとれるが普通では結果が尋常ではないことを意味する。

「北里さんも研究者ならご存知とは思いますが、現代に医学ではDNA鑑定は絶対です。そこで血液のABO式、RH式、MN式についても検査しました。ABO、RHとも問題はありませんでしたが、MNではあなたがMで奥様がMNですが、残念ながらお子さんは双方ともN型です。絶対にありえません」
「そうですか・・・」
顔が青ざめ血の気が引くのが自分でもわかった。

妻の沙織は貞淑を装いながらほかに男がいて、過去に2度もその男たちの子を孕んでそれを自分たち家族に養わせ知らん顔をして過ごしている。
「連絡を差し上げなかったのは他でもありません。先にあなたが探偵に調べさせ納得なさった上で聴きに来られることを望んだからです」
暗に研究者なら結果については想像ができたはずで、ここに来られるのは相談だけではなかったのかと問われているように聞こえた。

「父権は否定されたわけですから離婚調停を開かれても勝てると思いますが、そうなると血縁関係をさかのぼって調べることにもなります・・・」
何を説明されているのか北里新三郎には語尾が聞き取れなかった。
「おせわになりました。ありがとうございました」

やっとこれだけ言うと研究所を後にした。
周囲の音をかき消すように左の耳からキ~ンと耳鳴りが聞こえ悪寒がした。
真っすぐに歩こうとするのだが身体が斜めに傾き目標に向かって進めないでいた。

結婚以来妻を目にするたびに湧き起こる妄想が、隣で安らかな寝息を立てる妻を見ると益々膨れ上がり治まらず苦悩に歪んだ日々を送り続けた。
それが妄想ではなく現実に妻は延々ほかの男と不貞を働き、家に帰れば何事もなかったかのように貞淑を装って自分とも肌を重ねていたと思うだけで腑の腸が煮えくり返った。
威厳に満ちた男という形態を全否定された気になった。

家に帰った北里新三郎を玄関口で真っ先に妻の沙織が出迎えた。
「お帰りなさい。お疲れ様でした」
表情は常と変らず穏やかだったが新三郎は無言のまま書斎に向かった。

沙織が後に従った。
「もう一度聞くが、あのふたりの子供はいったい誰の子・・・」
問う声が震え、語尾は上手く発音できなかった。

「あなたの・・・」
聞き入る沙織の顔が生気を失うのがわかった。
「うそをつけ!」もはやそれはわめきに似た声だった。

「結婚以来これまで、貞淑を装いながらずっとほかの男と関係を持ち2度も孕んで子を産み、それをこの家で育てえさせてきた。普通の神経ではとても考えの及ばん度胸の据わった裏切りだ。化けの皮が剥がされることがなければこの先も同じことを繰り返していたんだろうな」
我慢に我慢を重ねた言葉が堰を切ったように口を突いて出た。
「何かの間違いでは・・・」沙織は懸命に落ち着き払おうと努めながら聞き返した。

「この鞄に頂いてきた資料が入っている。それをよく読んでから言いたいことがあれば言え」
沙織の前に先ほど研究所から頂いた資料を投げて渡した。
床に落ちた資料を拾い上げると沙織は一心にそれを読んだ。

「ねつ造文書だというんじゃあるまいな」
沙織は文書から顔を上げなかった。
「言ってません、そんなことは一言も・・・」

「じゃあ聞くが、この文書にある男とはいったい誰のことなんだ?」
「何も申し上げることはございません」
「この期に及んで、今度は黙秘権か?これほど証拠がそろっていながら裁判にでも持ち込もうというのか?」

「裁判は行いません。わたしが子供を連れてこの家から出ていけば済むことなんでしょう?」
沙織は顔を上げ新三郎を見つめた。
「ご迷惑をおかけしました」

「勝手なことは許さん」
「ではどうしろと?」
「これは研究所からも進められたことだが探偵を雇う。彼らにすべて調べさせ、寝取って胤を仕込んだやつに慰謝料を請求してやる」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

もう何を言っても無駄だと知った沙織は深夜、寝ていたふたりの子供を起こし事情も告げずひっそりと家を後にした。子供たちは子供たちで前回家を出たときの様子がただ事じゃなかったと子供心にも感じていたためか素直にこれに従った。
終の暇を告げたかったが逆上した夫は書斎にこもって計画を練って下手に声をかければ火に油を注ぐ結果にもなり得ないし、義父母には悪いことをしたと心で詫びたが遅かれ早かれこうなることは感ずいていたと思い、すでに休んでおられるのを無下に起こすのは止めた。したがって沙織たちが家を抜け出したことに気付かなかった。

沙織はひたすら悲しかった。
本当の理由を告げれば、それはそれで傷がもっと深くなるかもしれないと思った。それならいっそのこと自分一人で罪をかぶれば済むことだと以前は考えていたが、まさか育ててきた子供にまで憎しみに歪んだ牙を向けられようとは思わなかった。
だからこそ前回家出した折にこうなることを予測して実家に子供を連れて帰った折に子供たちを里の親に預け、沙織だけある場所に出向き前もって極秘裏に下準備はしてきたつもりだった。

沙織の頭にあったのは子供たちの安全確保だった。
自分の子として認めようとしない夫は、深夜に脱出した子供たちを見つけた場合、沙織と同等かそれ以上の仕打ちをするだろう。安全を考えてくれるほど甘くはないことはその眼を見、言葉を聞いていればおおよそ見当がついた。
何も知らない子供たちと無事に暮らしていけたらと、一縷の望みをこれから向かう場所と出会うことになる相手に託した。

幸いなことに家を出た日も含め行程中は天候に恵まれ寒い中ではあるが野宿しながら徒歩で向かうに命の危険が伴うほどでもなかったと気づかぬうちに逆上していた沙織は思っていたが後になってこれが命取りの行脚になってしまう。
一行は追跡を避けるため裏道を抜け向かった。幸いなことに子供たちはこれを遠足とでも思ったのか途中歌を歌うなど和やかに進むことができた。
長男の健太は終始健気に自分で歩いてくれた。奈緒は疲れたころを見計らい何度も沙織が背負って歩いた。どんなに着の身着のまま逃避行しているとはいえ防寒用の衣服もあれば食用も水もある。その上に5歳の子供を背負って歩くのはさすがに苦痛を伴った。



新三郎はすっかり妄想に取りつかれ、もはや人とは思えないほど冷徹になりきれていた。一晩のうちに妄想は胤の違う子供にも及ぶほど凝り固まっていった、自身も別れるどころか妻も子も寝取った男ともども断罪の決断ができたからだった。
朝になり沙織と子供たちが消えたことを確認すると益々怒りが募った。あれほど我慢に我慢を重ね家に住まわせ気を使ってやったのに泥棒猫のごとく用が無くなればだまってさっさと立ち去る、それが余計に許せなかった。計画を実行に移した。
家を出て行ったということは裁判に勝つ何かがあるからだと勘ぐった。このうえまだ自分が努力して気づきあげた財産を横取りし胤をつけた男に貢ぎたいのだと邪心が湧いた。それならその前に確証を掴まなければと先走った。

両親が聞けば絶対反対したかもしれない探偵屋に独断でイの一番に連絡を取ったところからして異常だった。
名家であるならそれなりの弁護士にお願いし、問題の解決に当たるのが筋のところを不貞・不倫という屈辱的な部分だけで頭に血が上り思い知らせてやろうという歪んだ考えの揚句不倫に似合いの探偵屋に決めたのだった。

依頼を受けた翌日から探偵は動いてくれた。
事件の内容が不貞捜査であることから探偵事務所はいつも行う不倫調査のつもりと軽く考えノウハウ通りしらみつぶしに男女が不倫の際良く使うホテルの目星をつけに歩いた。
それと同時に、写真をもとに似顔絵を作らせて聞き込みして回ったが、なぜか空振りに終わった。そこでこれまでに手掛けた失踪事件で行う婦人の足取りを日常の行動範囲と思われる各所の防犯カメラの映像から追ってみたものの、これも全く手がかりがなかった。

どの聞き込みでも判で押したように沙織は同じ店に立ち寄り、ひとりで買い物を済ませるとそのまま家路に向かっていて、北里家の周囲に取り付けてある防犯カメラにもその出入りの際の姿が正確無比に映っており疑う余地は皆無に思えた。
このことから普通に言うところの欲情にまみれた不倫の男女関係の線は消えた。もしも男女が不倫の関係にあったならば頻繁に連絡を取り合って出会いを繰り返し、その姿は必ず誰かが目にしているはずだが、今回の事件に関してはそれは一切なかった。
同窓生などにも聞きまわったが学生のころから沙織に浮いた噂のひとつもなかった。

深窓の君というにふさわしいほど結婚を機に外部との付き合いはプツリと途絶え皮肉なことに貞淑というにふさわしい生活をただ淡々と繰り返していたことがこれで証明された。
その世間を知らないはずの女が幼子ふたりを連れて家を出たということは外部に必ず協力者がいると思って割り出しに全力を挙げたがどこで聴いても誰に聞いても足取りはつかめなかったし協力者も見つからなかった。

それよりなにより、深夜に忽然と消えた親子の行先が思い当らなかった。前回飛び出した時には実家にまっすぐ向かっている。そう思って幾日も実家の周囲を取り囲んで出入りの人を監視したが、ついぞ見つかることはなかったし、実家の様子にしても平日と変わらないように見えた。
深夜に自宅を出たといっても実家に帰るならバスとかタクシーを使っているはずなのに、その会社を訪問しても答えは黒だった。ここまでで実家に向かうという線は消えた。
知り合いを呼び寄せるとしたら電話をかけたはずだから記録の残っていそうなものなのにそれもなかった。

「所長、この件は本当に不貞調査で本人と子供は家出したんでしょうね?」
問われた所長の水島真一も応えに詰まった。
「それじゃ村上さんよ、お前さんまさか依頼主が殺して遺棄し、それをわざと探させて時間稼ぎしてるとでもいうんじゃあるまいな?」

「これだけ探して何一つ見つからない不倫調査なんて見たことも聞いたこともないんじゃありませんか?見張ってたら相手は我慢できなくなってひょっこり顔を出す。それを報告するんですからうまい仕事、それが間違って殺人事件にでも発展したら事務所はいったいどうなるんです?」
「そうですよ、事件が解決しなかったら報酬ももらえない。このままじゃ事務所は潰れてしまいます。何かアイデアはないんですか?」
終いに事務員までこんな発言をする始末だった。

確かに今は証拠もない、しかしこのまま姿をくらまし続けられるとは思えない。生きていたら必ず顔を出すが、死んでいたとしたら・・・
「俺はとんでもない事件に首を突っ込んだかもしれない」
水島真一は身震いした。

捜査は暗礁に乗り上げたように思えたが、逆に不貞のきっかけがご主人側にあるとしたらという村上と事務員の思わぬ発言で捜査は逆に依頼者を疑うことに事務所内の気持ちが傾き始めていた。
捜査が始まってすぐに気づいたことに、老夫婦と新三郎とのあまりにも似ない面が関係者に疑問を持たせた。そこで、物は試しと新三郎の過去をまず洗い始めた。
北里家の縁者を辿って老夫婦に子供は生まれたことがあるのか聞き歩いた。そこで聞きつけたのが老夫婦には子がなく新三郎はどうやらもらい子のようだという噂を耳にした。養子になる前の新三郎はどんな生活をしていたのか、その調査が始まった。

そしてとうとう行き着いたのが新三郎が孤児だったという事実で、苦労はしたもののかつて拾われた病院名を探し出すことができた。
当時そこに勤めていた医師や看護師から事情を聴こうと思って聞きまわったが、秘密保持の観点から聞き出せないでいた。
ところがひょんなことから聞き込みが進展した。しつこく病院に出入りし関係者に付きまとううちに警備がこれを嗅ぎつけ邪魔をするようになった。当初面倒なやつらだと嫌悪したが、考えてみれば彼らが一番病院内の変化に気を回す職業だということに気が付いた。

病院職員は口が堅かったが警備員はあっさりと当時のことを話してくれた。
話は実にまとまりがよく、こちらが気をまわして質問せずとも相手から勝手に事細かに話をしてくれた。怪訝に思ってきくと過去に美しい女性から同じことを聞かれ応えたところ大層喜ばれたからだという。
それを捜査員は沙織と見た。沙織も事情があって戸籍を調べるうちに養子の件に疑問を持ち警備員に行き着いたのではなかろうかと思った。

そう思った時、自然と回答が出た。
依頼者は確かに研究者として優秀な男だった。
しかし妻の沙織はその上を行く聡明な女だったのではなかろうかと思った。そして何かを嗅ぎつけ、それが不貞を行う原因にもなったのだと仮説を立ててみると、後は簡単に答えが出た。何らかの理由で胤がない、この一言だった。取っ付きの捜査はこの一点に絞られた。


警備員の話によると2歳になる男の子は助けられた当時極寒の中に長時間放置され、しかも重篤な栄養失調のため肺炎を起こしており高熱をだしICUに入れられ完治までに相当期日を要し、完治後も度々容体が悪化したので病院で長期間預かりとなった。
逆に小さな布団にくるまれていた次男は容体が安定しており健やかに育って早々に養護施設に移されたという。

そこで妻の沙織が通っていたレディースクリニックでこの事件のことを含め院長に追及したところ、あっさりと新三郎には胤がないことを認め、それでも子供が欲しいと奥さんから相談されていたと語ってくれた。
真実を追求したとはいえいかにも口の軽い院長だった。

こうなってくると真実はひとつだった。
子種が欲しくて誰かと定期的に情交を持ったとしか思えなかった。
その沙織が子種を欲しがっているという情報を男はどこで手に入れ沙織を誘ったのか、それが問題だった。

こればかりは前回の発言をきっかけに院長を脅してみても回答が得られるはずもなかった。
こうして時間だけが過ぎて行った。



沙織たちは深夜自宅を抜け出し、沙織の記憶に中にある場所に向かって歩き続けた。
タクシーに乗ったりバスに乗ったりすれば必ず足がつく、その場所だけは探偵や夫に知られたくなかった。
それ以上に、家出する際 子供たちの後々のことを考えて金品は何も持ち出さなかった。

これから親子3人が生き延びていくために必要なお金を少しでも残そうと思うと歩くしかなかった。
野宿をしながら行き着いた先に地獄が待っていた。

そこは人里から随分離れた山中に作られたある教団の集落だった。
集落と言っても一山丸ごと教団の敷地であり個々の家は叫んでも聞こえないほど離れており、万一一般の人たちが紛れ込んでもすぐには教団敷地とわからないように偽装がなされていた。
その中の一軒に沙織は子供たちを誘った。

一戸建てと言ってもそこは持ち主にとって隠れ家として使う小さな小さなバンガローだった。
沙織はこのバンガローに誘い込まれ健太と奈緒の胤を計算しつくしたうえで仕込まれた。
出生の秘密を知っているのは、だから関係を持ったその男しかいない。

もしも逃げなければならない時が来たら、迷わずここに来るしかないと沙織は常々考えていた。
だから最初に子供を連れて家を出た際、このバンガローに当面の非常食を担ぎこんでおいた。
逃げ込んでから3日後に持ち主がにょっこり現れた。

「しばらくだな、この子たちか?あの時の子は」
「違います。この子たちはちゃんとした・・・」
「へえ~ そりゃそうだよな。間違ったことやっちゃお屋敷の奥様の面目丸つぶれだからな~」

沙織はドキリとした。男にはあの時の約束を守る気持ちなどまるでないとわかった。
健太と奈緒を孕むときのやさしかった態度とは一変し、軽蔑の念が見て取れ、その欲情に滾った眼が入ってきたときから沙織の胸や足に絡みつくように向けられる。
思わず後ずさりした沙織の手首を男の太い手が掴み強引に引っ張っり隅のベッドに放り投げた。

「やめてください」
沙織が抵抗すればするほど男は躍起になって押さえつけてきた。
「今更きれいごとを言うんじゃないよ。ほ~れ、あの時のようによがり声あげてのけぞってみな、ちゃんと可愛がってもらいたいんだろう?だからここに来たんじゃないのか?」

連日の夫の責めと休みなく歩き続け疲れ切った身体で男に抵抗できるはずもなかった。
足首を持たれ逆さ釣りにされたような格好で下着を剥ぎ取られ下腹部を子供たちの前で剥き出しにされた。
パンティーを剥ぎ取っておいて両足首をもって高々と上に吊り上げ剥き出しの下腹部に顔を突っ込んできて花弁を舌で弄りまわした。

抵抗すればするほど責めは熾烈を極め、反応し始めた下腹部の羞恥に顔をが歪んだ。
せめて性器だけは子供たちの前で晒してほしくないと男の要望通り僅かに自由がきく右手を男の股間に伸ばし擦った。
それが合図とみたのか男は沙織の足首から手を放しズボンを脱ぐとすっかり興奮し切った男を濡れ始めた沙織の膣に突き入れた。

男と女の迎合など研究者の夫に仕えるため忘れていたはずなのに醜いほど身体は男を求め忘れていた感覚が男を狂喜して迎え入れてる。怯える子供たちの前で獣のような交合が始まった。
沙織も子供を産み身体はすっかり熟成した大人の女になりきっていたことを今更に思い知らされた。
最初に健太を宿した時も、そのあと奈緒を宿した時もセーブしないまま女になりきればよいという安心感から男に組み敷かれ燃え尽きるまで快楽を楽しめた。

それが今度は違うと思っても悲しいことに交合が始まれば、やはり成熟した女として頭とは別に身体が勝手に反応してしまう。
沙織はそれが呪わしかった。
沙織は身動きできないほど弄ばれ半ば快楽に気を失っていた。男は欲情をすべて吐き出すと親子が期待していた食べ物については無視し続け何も置かずにバンガローを立ち去った。

沙織たち親子は、殊に沙織は犯されはしたが、求める女のために何か持ってきてくれていると期待していただけにがっかりした。
それでも次に来るときには何か持ってきてくれるのではないかと、淡い期待も寄せた。
持ち込んだ食料が尽きかけていたからだった。

だが、男はその後も幾度か来ては沙織を子供たちの前で襲った。
男との行為が始まる予感がすると沙織は子供たちに外に出て遠く離れているようきつく言った。
男に抱かれている間に意図せずして発する淫欲な声を子供たちに聞かせたくなかった、ましてや男と欲情をむき出しにして性器を絡み合わせる姿など見せたくはなかった。

沙織は考えた。
男を、牝として欲情の限りを尽くして受け入れれば乱れきった女を征服したくて何か運んできてくれるかもしれないと。
そしてそのとおり、次に来たときにはなにがしかの食料を持ち込んでくれた。これに狂喜した。女として一人の男を征服することができたと勘違いした。実際には飢えながらにして生きることの苦痛を与えようとわざと加減して食用を運んでいただけだった。

沙織は重大な計算ミスを犯した。
男が運び込んでくる食料は親子が食べるに十分でなかったことに組み伏せられた快楽の余韻から冷め切れず、困惑する子供の前で逆に男を虜にしたと有頂天になってしまっていた。直前に死が迫っていることに気が付かなかった。
沙織は食べないようにして子どもたちに分け与えたが、それでも徐々に子供たちの体力は奪われ飢えが始まっていた。

沙織は近隣の家々を回り食用を分けてくれるよう頼んで回ってみたが、どの家も門戸を閉ざし、まるで死人の村のようにみえ早々に諦めた。
飢えの症状は体力が一番弱い奈緒に真っ先に現れた。最初の数日は沙織が男に襲われたときのショックのうわごと・寝言かと思われた奈緒の呻き声が飢えの幻覚からきていることを知ってバンガローを後にし、一般集落目指して彷徨い出た。
このごろになると道端にある食べられると思えるものは何でも口にした。

目的地に向かって子供たちに懸命に声をかけ歩ませようとするが、奈緒は時折道端でくるくる同じところを回るような行動をとりはじめていた。それだけ歩みはのろいものとなっていった。歩き続けていると河原からなんともよい香りがした。
ヤミで捕まえた稚アユを焼いて食べているところに出くわし、ついフラフラと歩み寄った。
近寄ってくる得体のしれない人物に男たちは最初物珍しげに見ていたが、それがまるで死人が歩いているように見え慌てて手荷物を抱え逃げ出した。

残されていたのは火の中で串刺しにされた数匹の焼きかけの稚アユだった。
奪い合うように火の中に手を差し込んでそれを取りだし子供たちは貪り食った。気絶するほど燃え盛る炎の中に手を突っ込んだというのに、久しぶりに口にする食べ物に心を奪われ自身の手が焼けていることすら気づかなかった。
数日なにも口にしなかった胃の腑に一気に食べ物が供給された。

それがふたりの死を早めた。
目の前の炎に吸い寄せられるようにふたりは倒れ込んだ。
勢いよく燃えていた炎につつまれふたりは息絶えた。

それを見た沙織は狂乱した。
ふたりを救い出そうと自らも炎に飛び込み子供を掻き抱いたが思考はそこで尽きた。そのなかで肉の焼ける心地よい香りにあれほど我を苦しめた空腹も治まり香りの元となる我が子を愛おしそうに掻き抱いたまま息絶えた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

沙織を身籠らせた男の捜索は原点に立ち返っていた。
研究所で調べられたすべての書類を再調査し、その胤がある種新三郎と似ていることに気づいた。

そこで養護施設を調べ、離れ離れになった弟が今も生きていることを突き止め、現住所に走って周辺の聞き込みから男の犯行動機の調査にかかった。
結果、男は施設を出てから職業を何度も変え、いつごろからかある種の教団に出切りしていることを突き止めた。
男と教団、それがなぜ沙織を狙わなければならなかったか、捜査員の一方はそれを探し出すため北里家に昼夜を問わず張りついた。

ある日の明け方近く、張り込みに疲れつい脇にあった電柱に向かって村上は用足しを始めた。
出しきって身震いしながらふと見上げた電柱の中ほど、妙な高さに広告が貼り付けてあるのに気付いた。
広告を張りつけるなら普通は路上を歩く人の目の高さか、それより少し高いところに貼る。それがこの広告に限って明らかに邸内にある植え込みのさらに上から覗き見ないと気づかない場所に貼り付けてある。

見張り用の双眼鏡を取り出してその広告を見た。
沙織が通っていた病院名と不妊治療・秘密厳守という文字が飛び込んできた。
このふたつを合わせて考えれば不妊に困っていた沙織の鼻先に胤の話をちらつかせ病院に向かわせたことになる。

通常なら不妊治療は夫婦そろって病院を訪問し、検査を受けた結果によって双方の同意をもって冷凍保存の精子を妻の体内に植え付ける。
その夫を精査し胤がないことを告げられるということを沙織は隠したかった。
だがそれでは北里家の待っている子宝はいつまでたっても得られない。

恩返しのつもりで自分だけ犠牲になればと沙織は単独で病院に向かった。
ところが清純な沙織にこの病院は健常な精子提供者と偽って、今ちょうどその提供者がみえているとこの男との行為を勧めたのではなかろうかという疑問が湧いた。
そこで病院の院長の身元を洗うと、病院は医療事故で経営が破たんし院長は教団から多額の借金があることを突き止めた。

警察の取り調べに対し院長はあっさりと行ってはならない男女の直接的な行為を斡旋したことを自白した。
教団幹部のその男の脅しに屈し、不妊治療など行ったこともないのにいかにもできるような口ぶりで診察に当たり、その場で優秀な精液提供者と男を紹介したことも吐いた。
もっと驚いたことに、男は病院からそのまま男が所有するバンガローに沙織を連れ出し、そこで犯していたのだった。

件の男はというと、教団の村には資金集めが必要と幹部以外の男はほとんど不在にしていた。
教祖や幹部に仕えるのは資金集めに全国を飛び回る男たちのの妻が当てがわれた。
幹部はその妻たちに修行と称し快楽を施し境地に至ると性行為を行って後妻たちに向かって修行成れりと都合よく説いていた。

一旦関係を持つとその女たちは快楽すなわち修行であり出世であると勘違いし先を争って修行を求め男の元に押しかけて来るようになった。
修行に名を借りた酒池肉林だったがそれを見るにつけ、いつしか女は不浄の生き物と男の目に映った。
貞淑を装いながら胤を仕込んで欲しいと願う沙織にもいつしか嫌悪感を抱くようになっていった。終いに殺してしまおうとさえ思うようになっていった。

院長の自白によって教団の村では一種異様なことが行われていることを知った警察は直ちに捜査令状を取り教団敷地内に立ち入った。
そしてその悲惨な状況を目にした、あの焼身自殺と判断された駐在所の巡査が焼け死んだ親子は酷い栄養失調だったことと合わせ不審に思い調査に加わることを願い出てくれた。
こうして沙織とその子供たちが暮らしていたバンガローに北里家の命を受けた探偵社の村上が警察の殊に駐在所の巡査を携え押し入った。



運が良かったことは飢餓で焼身自殺と思えた遺体の中から稚アユが検出されたことで、これが密漁で捕獲されたものである可能性が否めないことから主に密漁者の割り出しに全力が注がれた。

その捜査線上に上がったのがこの教団の幹部で今回胤に絡んでいるとみられるバンガローの所有者の男だった。
教団の資金を得るため禁漁期間であっても大がかりな立て網を仕掛けアユを追いこんで大量に捕獲してしまうという方法で最盛期には月に7ケタを超える稼ぎを叩きだし教団に貢いでいた。
別件で任意同行を求められた男は教団全体の責任と脅すとあっさりと教唆殺人について口を割った。

バンガローに親子を留め置き母親を辱め、その子供を餓えさせることで憂さ晴らしするつもりだったものが気が付けば栄養失調の極に達していて、誰の目にももはや救いようがなかった。
しかもそれが人妻をだまし孕ませた我が子とあって尚のこと罪に問われると思い、いっそ殺してしまえばとこの計画を思いついたと語った。

餓えた親子がおそらく自殺した日に教えたとおりの道を辿ってこの河原を通りかかるだろうことを予測し、餓えた人間に一気に食べ物を与えると死と直結することをものの本で読み、その日にあの場所で稚アユを焼いて食うと美味いだろうからやってみろと誘っていた。
裁判と認否のため採取された資料から、この男が紛れもなく新三郎の生き別れになった実の弟で、兄が裕福な家庭にもらわれていったことを嫉んで美人妻の沙織を弄って家庭を壊してやろうと仕組んだことだったと白状していた。
殺人に至ったことについては道義的に餓えさせ殺したとなれば教団から追われるかもしれないので、誰にも知られず始末したかったと語った。

男は幼○虐待・婦女暴行と殺人ほう助の罪で起訴された。

裁判の関係上、施設から提出された男の幼い頃の写真をみせられた新三郎の目に映ったのは、長い年月忘れることのできなかった吹雪の病院の玄関先で寒さに震えながら必死に見守った可愛い弟の顔だった。
あの秋の夕暮に、不審に満ちた気持ちでみた奈緒の横顔とうりふたつの男の子の顔だった。

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テーマ : 膣開発・中逝き願望
ジャンル : アダルト

tag : 胤,餓え

残照 序章

6月に入ると河川は途端に活気を帯びた。
1日の解禁日はアユ釣り目的の太公望たちが夜も明けやらぬころから川に入り夕暮れまで釣り糸を垂れる。
今年もその解禁日が数日後に迫っていた川べりを監視員の男は物陰に身を伏せるようにしながら見回りを続けていた。

狂信的な太公望にとってイの一番にアユを釣ることほど魅力に富んだものはないと解禁日を待たずして根こそぎ稚アユを釣り上げてしまおうとするならず者が毎年必ず現れる。
監視員は主にボランティアで構成されならず者の行為を未然に防ごうと見回っていた。ヤマメ釣りなどは既に解禁になっているとはいえ釣るスタイルが全く違うため解禁前のアユを狙う無法者を見逃すことはまずない。
その男が夕暮れ時に河川敷でたき火を囲む親子を目にした。監視対象外の大方キャンプファイヤーか何かだと、さして気にも留めず通り過ぎたが、後々になって考えてみればそこに男の姿は認められず「まさか違法な潜りをしていたのでは?」と夜が明けるのを待ってその場に駆けつけたき火の後に何か不審な痕跡でもと燃えカスを突くうちに中から現れたのが紛れもない人間の頭部とわかり110番通報した。

駆けつけた県警によって現場検証が行われた。
遺体は親子らしい3体ではないかと思われたが相当炭化が進んでおり身元を確認するのにに手間取った、行方不明者の捜索願も出ていない現状において鑑識課もDNA検査は実施したものの対象者が不明なため困惑するばかりだった。
第一にこれが自殺なのか他殺なのか、本来ならそこらあたりから捜索を進めなくてはならないが、生きていた最後の目撃者が夕暮れ時に河原でたき火をしていたというだけではなんの確証も得られなかった、現状に争った跡などもなかったこと、周辺に置いてあった、明らかに焼死者が持ち込んだと思われる遺品が路上生活者などが身に着けている古着にも見えたことから県警は何らかの理由で自殺したものとして遺体を身元不明者として荼毘に付し一件落着とした。

この上層部の決定にどうしても従う気持ちになれない人物がいた。
それがこの地区の駐在所の巡査で、これまで事件というようなものに出くわしたこともなく、残念ながら出世には遠く及ばなかったが秋が来れば無事定年を迎え退官できる家族一同お祝いの席で・・・というところまで来ていてこの事件だった。
所轄内で決して事件などという問題を起こしてはならないと巡視も怠りなく続けてきてこのありさまだった。

河川の漁連から連絡を受けるまで河川敷で親子がこの時期にたき火うなどという状況は目にしていなければ思ったこともない。
川遊びするには山間部のこのあたりの水は冷たすぎる。
もしもこの状況を先に見つけていたならば必ず現場に立ち寄って何らかの話をするなりし、それとなく状況確認もできたはずだとそれが悔しかった。

監視員はともかく、アユ釣りなどというものは例年同じメンバーが顔をそろえる。
もしも見かけない顔が混在していたなら必ず注意を怠らなかっただろう。
ましてやそれが女子供であればなおさらのことだった。

何らかの事情で灯油をかぶり火をつけたという事件はよく耳にするが、どの事件でも熱さのあまり暴れ回った挙句絶命している。
河川敷で母子と思われる3人が焚いたたき火の中で身動き一つせず焼死するには余程の訳があるに違いないと思った。
だが、それが他殺ならろくに見回りもしないこの田舎、都合の良い証拠隠滅となりうる。

この日以来巡査は鬼になった。
「どんなことをしてでも犯人を突き止めてやる」
勤務時間も含め、寝る暇も惜しんで聞き込みに当たった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
街外れに河が流れていてその河口が小さな湾を形成し漁港になっており、休みとなると湾の入り口の堤防は太公望たちの格好の釣り場になっていた。

その日の午後遅くから北里新三郎は7歳になる長男の健太と5歳になる長女の奈緒、それに妻の沙織を連れて湾に群がる鯵を釣りに来ていた。

自慢げに子供たちの相手をしながら鯵釣りに講じる新三郎だったが、出かけるのが早朝でなく午後になったのも、撒き餌をすれば誰にでも釣ることができる湾内の鯵が対象だったのも、それもこれも沙織の提案で、その沙織も知り合いに相談して教えてもらってここに来ていた。

新三郎は開発部に勤務しエリートコースを歩いてきた反面、世間との付き合いや家庭内のことはさっぱりで、沙織が黙っていればおそらく何年たっても子供たちと交流を持とうとせず、老いていってしまうと思われそれを案じ、また、多少でも子供たちの手が自分から離れてくれたらと思ってこの計画を持ちかけていた。

声をかけないで放置したらいつまでたっても食事もせず寝ることもなく研究、つまり仕事に没頭してしまうと妻の沙織からも同居の両親や子供たちからも言われる通り本の虫で、眼鏡なしでは一歩も歩けないほどの強度近眼だった。

湾内に鯵が遊泳し始める冬季の昼間は短い、頑張って撒き餌を始め味が釣れ始めた頃にはすっかり陽は西に傾いていて新三郎にとって子供たちが釣り上げた小魚を針から外し釣り糸を調整するのが次第に困難になり始めたころ、妹の奈緒の釣り針がひょんなことから隣で釣りをしている人の服に引っかかり騒ぎ始めた。

その、夕景に染まった奈緒のシルエットを見ていた新三郎に不思議な感覚が一瞬よぎった。

屈託のない奈緒の母親そっくりのきれいな整った笑い顔しか見たことのない新三郎、が まさに今そこにいたのは意にそぐわない竿先の感覚に顔を歪め親を急かす見も知らぬ顔の子供と映った。

動物のこう言った感覚というのは一種鋭いものがある。

目が見えないからこそ、普段から何かと感覚を研ぎ澄ますしかなかった新三郎はその時の奈緒を一瞬だが我がの子かと疑念がわいた。

それでは共に暮らしてきたこれまでに一度たりとも疑ってかかったことはなかったかというとそうでもない。

新三郎も沙織もどちらかというと顔立ちは整ってはいるが小柄で華奢、ところが奈緒は保育園の中では大柄な方で頬骨など祖父母には似てはいるものの新三郎とは全く違っていた。

元来研修肌の新三郎は疑問がわくと正しい答えを導き出さずにはおれない性格だった。

だが、今回ばかりは躊躇するものがあった。 それが出生に秘密で、密かに調べた結果によると新三郎は今起居をともししている両親と血の繋がりはなかった。

記憶にもない遠い昔、産んでくれた両親の、何らかの都合によりどこかに捨てられ、それを子供のなかった現在の両親が養子に迎え入れてくれて今がある。

このことを知ったのも今回と同様偶然だった、職場で残業をしていてフッと脇に目をやったとき鏡に映った自身の顔に両親と違う何かの疑念を抱きDNAの自己判定キットを購入し調べ、実の両親ではない結果に探偵を雇って調べさせ確証を得ていた。

それでも今の現在まで内緒にしているのは、いかに身分や収入があろうと世間にただ一人放り出され得るのがひたすら怖かったからである。

人もうらやむ美人妻の沙織だって、元はと言えば見合い同然の結婚 彼女を紹介してくれたのが職場の上司であればこそかつては業界に隠然たる勢力を誇っていただけにそこに両親の力が働いていないとは言い切れず、もしも迂闊な発言で関係が壊れることがあればと、それも怖かった。

そう思って通勤や休みに近所の親子を見る時、あの父親の手を取って嬉しそうにしている子供が実はが違っていて、ただ単に男が托卵された子を我が子と信じ育てているだけなのではと思うとき いても立ってもいられない気持に苛まされる。そんな情に流される気持ちになれない眠れない夜が次第に増えて行った。

恵まれた家の養子に迎え入れてくれたことはありがたかったが、はれ物にでも触るような扱いを四六時中受け絵に描いたような道だけ歩まされ続けた新三郎は期待に添うよう努力した。神童と呼ばれるほどの記憶力はすべてこの努力のたまものだった。

その努力とは 学ぶ上で、どんな些細なことでも聞き漏らすまいとメモを取るようになり、それが高じてそのメモを夜になると正式な日記にしたためるようになっていった。

年齢を重ねるごとに覚えなければならない会話や出来事は増えた。

普通にメモを取っていては間に合わないからと、自我流で速記も考案しこれに備え 見たものや聴いたものすべてを対象に深夜日記を書くことで記憶を新たにし、また研究開発の足しにこの速記を利用することもあった。

誰にも怪しまれず妻の不貞を見つけ出す手段はこのメモを調べるしかなかった。

日記を調べればよいのだが、調べられては困る内容が書かれていた場合 恐らくその日記は妻によって処分されていると見た方が賢明だと思って書庫に行ってみたら、常日頃口癖のように言っていた「書類の保存期間は5年」を過ぎたこともありその年代は既にごっそり消え失せていた。

残すところは会社の自分用に研究室に保存しておいた速記しかなかった。年代ごとに異なる文字表現で書かれている速記の中から妻沙織の月経周期とにまつわる交渉を持った日付を探し出すのに数ヶ月要したがなんとか探し出すことができた。

沙織の月経周期はおよそ28日サイクルで回っている。問題の月は始まったのが5日で終わったのが8日だとすると受胎可能日は12日から20日までである。

この間に交渉を持ったのは14日と18日だけであったから奈緒の生年月日とほぼ一致していて、この点だけは自分のだと言い含められても言い返すことはできないが、もしもこの間に沙織が外出しほかの男のを宿したらできないこともない。

新三郎はこの期間の中の可能性について調べ始めた。

土日は会社が休みの場合が多いから滅多な約束事で外出はできない、したがってこの日ではないことは分かったが、問題は平日の昼間で なにかの用事があって近所ではなくほんのちょっと足を延ばし出かけてはいないかとその記述を調べ始め、それに行き当った。

最初の交渉日が日曜の夜、次の交渉が水曜の夜 木曜と金曜は両親と一緒に買い物に出かけているから自由になれた日と言えば月曜と火曜だった。

結婚以来妻に申し訳ないと思いながらも若いころよりどちらかと言えば性に淡白だった自分をこの時だけはなぜか執拗に誘って交渉を持とうとしてくれていて、当時はそれが愛のなせる業ではないかと思ったりもしたが、育っていくにしたがって様子が違ってくる子供たちを見るにつけ、それが研究者の本能なのか疑念を持つようになっていった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「えっ、信じられない。あなた本気でそんなこと言ってるんですか?」
遅く帰ってきた新三郎の夕食のかたず家が終わった沙織をテーブルに呼んで問いただした。
考えていた通りの反応が沙織の口を突いて出た。

「本気さ。結婚当初からなぜお前が私の妻になったのか不思議でならなかった。そう思って子供を観察しているとどんどん私の遺伝子を引いていると思えない姿かたちになってくる」
冷静に話そうとずいぶん考え、その通りに口を開いたつもりだったが顔は強張り手足が緊張で震えているのがわかった。
屋敷は広く、両親の寝室と子供部屋は離れていて声は届かない。それでも極力トーンを押さえて話したつもりだった。

「このごろのあなたって、寝付けないのか様子がおかしいと思っていたら・・・まさか自分の子供の父親が誰なのか疑ってかかっていたなんて・・・」
沙織もまたテーブルの端を掴んでうつむいてはいるが顔面蒼白だった。
「根も葉もないでっち上げだとでもいうのか?」

「来る日も来る日も一生懸命この家のために尽くしてきたわたしに向かって、まさかあなたが・・・」
沙織は言葉を失った。
「お前のことを大切だと思えばこそこれまで何もせず黙って見過ごしてきたんだ。陰になり日向になり尽くしてくれたお前が不貞を働いているなどと思いたくもない。そう思って何度も実行を躊躇ったが日ごとにお前には似ていても私にはちっとも似たところのない子供たちを見るにつけ研究者のみである私の内面が調べずにはおれなくなったんだ。いろんな本を読んだ。その中に書かれていたことをひとつひとつあてはめてみた。体毛にして然り、薄毛の私に体毛の濃い子供ばかりというのも変だし、背丈だってそうだ。頭部の形状だって全く違う。それらを総合すると私のではないという結論に達するんだ」

生みの親より育ての親などときれいごとを言うつもりはないと沙織に向かって言い切った。
「なんて陰湿な方なんでしょう。自分の子供を密かに鑑定にかけようとねめまわしていたなんて」
沙織は視線を落として反論した。

「もしこれが真実だとしたら、お前の腹に胤を仕込んだやつは その子供を自分の子供として懸命に育てる私の姿を物陰から見て嘲笑してるんだ。妻が生んだというだけで手放しで喜んで認知までして」
「なぜなの? なぜ今頃になって子供たちをそんな目で見るの? あの子たちが何か悪い事でもしたっていうの?」
沙織の瞳は深い翳りにつつまれ始めていた。

「結婚以来これまでに一度たりとも間違いはなかったと断言できるのか?」
「断言も何も・・・わたしはそんなふしだらな女じゃありません」
物言いは静だが、やり場のない憤りが翳りに含まれていた。

「そこまで言い切れれるなら鑑定に回しても別段問題はないだろう。父親から疑いの目を向けられながら一生暮らさせるよりましだと思うがな」
「あなたが育てた証拠に、仕草なんかうりふたつでしょう?そうまでして父親を慕ってるあの子たちがかわいそうだとは思わないんですか?」
「仕草なんてものは育つにしたがってなんとでもなる。肝心な部分は血の繋がりだ。そんな簡単なこともわからんのか」

「何事もなかったかのような生活を繰り返していながら、あなたが心の底でそんなことを考えていたなんて、悲しすぎます」
「だから正直に答えてくれたらいいんだ。あの子たちはいったい誰の子なんだ?」
「決まってるじゃありませんか」

沙織の言葉に険があった。
「奈緒を孕んだと思われる頃にお前はひとりで出かけている。帰ってきたのも遅かったと聞いた。計算からすると受胎は紛れもなくあの日あたりだ。子供の様子からすればその両日に誰かと交渉を持たなければ・・・」
「やめて! そんな嫌らしい想像は」
沙織の表情に険しいものがあったが、それに反して顔面は蒼白だった。

「結婚していたからと言って必ずしも間違いを起こさないまま人生を全うできる人間はいないと思う。そんな格式ばったことを言ってるんじゃない」
「いいえ、そんな目で見られたということ。それこそが侮辱です」
新三郎は何も言い返せなくなっていた。

目の前に愛してやまない妻 沙織の涙ぐむ姿がある。
平穏無事な生活を送っていたものに向かってこれほど侮蔑に満ちた言葉を放ってただで済むものとは思っていない。
それでもあの日、寸暇を惜しんで男と出会いセックスを楽しんだ妻がいて、しかもそれがもとで孕んでしまい、結果夫に知らせずして密かに夫の子供として育てさせるという罪悪だけはどうにも許せなかった。

「それでどうしろとおっしゃるんですか? 子供を連れて出て行けとでも?」
「今直ちにそうしろとは言っていない。育てるに納得のいくように協力してほしいと言ってるだけだ」
「どんなことをすれば協力になるんですか?」

「さる機関にDNA鑑定を依頼しようと思う。それなら文句は無い筈だ」
「なにもそこまでしなくても。生まれたときもそうであったように血液検査は毎年のようにやっているではありませんか?それでも不満だと・・・」
DNA鑑定では4兆7,000億分の1の確率で間違いが起こるという。そこまで辿れば否定材料 すなわち親子ではないという証拠が法的にもつかめる」

「もしそこで親子じゃないという結果が出たら、あなたはどうなさるんですか?」
「それは結果を見てから決めることだ」
「結果によっては父親と認めるんですね?」

「関係を結んだ男のDNA鑑定の結果も合わせて検討し、間違いなく私の子だとわかればだ」
「それは自白の強要じゃありませんか。先ほどから何度違うと言ったか・・・ 信じようとしないからです」
「それなら逆の立場だった場合、信じたというのか? えっ、どうなんだ?」

「そこまで言われるならお好きなようにどうぞ」
沙織は毅然とした態度で部屋を出て行った。決して間違いなど犯す安っぽい女ではないという態度がそこに現れていた。新三郎の頭に一瞬後悔の念がよぎった、が、ここで動じては真相は闇の中ではないかと思うと再び憤怒の虜にもなった。

翌日、遅くに帰宅した新三郎は両親の部屋に呼ばれ、こう告げられた。
「今朝、新三郎さんが出勤された直後に沙織さんは子供二人を連れて家を出られましたよ」
心淋しい声の中にも、どこか他人事のように聞こえた。

沙織が家を出たことは知っていた。
当たりがほの白く染まるような暁闇の中、沙織は徹夜で調べものに時を費やしていた書斎の新三郎に向かってこの家を出る旨告げてきた。
新三郎は机に向かって沙織に背を向けたままそれを聞いたが何も応えなかった。

「当分実家に帰って考えてみるそうだ」
「そうでしたか、ご迷惑をおかけしました」
「私達にとってはかわいい孫で喜んどったところだが、それではいかんかったかのう・・・」

なんの相談もなく夫婦で勝手に決めたことに対する不満の気持ちがそこに込められていたが、自分を育ててくれながら どこか世間体を気にしてばかりいた そのやり方がここに至っても変わらないことを言葉の端々から感じ取れ一層落胆した。
「いまここでご説明するわけにはいかない仔細あってのことで、解決には時間がかかると思います」
「そうか・・・ 裁判でも起こすつもりか? くれぐれも体面をな」

「新三郎さん、あなたにとって妙な考えを起こすと仕事にも影響が出ますよ。それでもおやりになるんですか?」
「よしなさい、妙な勘繰りをするもんじゃない」
話はこの一言で終わった。新三郎は軽く頭を下げると両親の部屋を出て行った。 その後ろ姿を見送る義父の口から深いため息が漏れるのを鬱々たる気持ちで聞いた。

先の短い両親は生涯を通じて家名を守るべく全力を傾けなければならない運命にあったといえよう。
そのためなら非道にもなれた。
息子を養子縁組する段になり、使うべき手はすべて使って素性を調べさせ迎え入れたはずの息子だったが 成人してみて初めて次代を担う子宝に恵まれないかもしれないという危惧を覚えた。

腹を痛めた我が子を持ったことのない夫婦がどんなに頑張ってみたところで子供に意思は伝わらない。ましてやもともと他人の子となれば どこか仰々しい態度に出たり疎遠だったりと 人との意思疎通にかけた子供を育ててしまった感があった。
そしてそれ以前に、肝心な成長期に杓子定規にものを図ったような態度で育てたことにより女の気持ちというものをはかり知る機会を失ったまま大人になり、他から手を廻しでもしない限り結婚には結びつかないと思われついつい手を出してしまいこのような結果を生んでしまっていた。

「一度こうと決めたら筋を曲げない子ですから」
「そうかもしれんな・・・」
老父は傍らの老婆に頷いた。

その性格ゆえに塾にも通うことなく独学で進級を重ね東大にも合格し、今の職にも就けた。
だが性格は暗かった。
その暗さをこの老夫婦は、東大まで出たエリートならおおよそ察しはつき調べ上げたうえで実の子ではないと知ったうえで今の境遇に何も言わず従ってくれているのではないかと暗黙の中にも考えていた。

新三郎はうっすらとした記憶の中に粉雪の舞う深夜、病院の玄関先にじっと立っているよう命ぜられ、両親と思える人影が自分と何か大きな包みを脇に置いたまま立ち去った。寒さと恐ろしさに泣き続け、明け方になって巡回してきた警備員に発見されて病院で保護されたような光景が過っては消え過っては消え それが病的にまでなっていた。
病院の、薬臭い一角の部屋をあてがわれ自由に外出することも出来ない中での生活でその性格は陰湿で暗いものに変わっていった。
社会人になり、上司や同僚と話す機会が増えるにしたがって暗い気質は影をひそめたように思え、突然今になって戻ってしまった。 あの日、早い冬の訪れを秋の日差しの中に見た気がした。

「暗い冬を未だ出し切れていなかったとは・・・」
自分を捨てた両親を慕ってやまない、そのための布石として些細なことでも聞き漏らすまいとする気質は未だ深いため息の中にあった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

沙織が健太と奈緒を連れて戻ってきたのは新学期が恥増す直前だった。
新年早々の出勤で周囲の手前残業もならず定時で上がって帰ってくると、まるでお通夜のようだった家がウソのように活気に満ちていた。
「お帰りなさい。お疲れ様でした」

沙織が玄関で出迎え、子供たちは奥の 恐らく両親お部屋から元気よく飛び出してきた。
新三郎はふたりの子供の方を抱くとそのまま書斎へと向かった。沙織が後をついてきた。
「子供の将来を考えて帰ってきました。あれからいろいろ考えたんですが、わたしが止めても調べるのを止めようとしないんでしょうからお好きなようになさってください」

シンとした物言いだった。
子供たちはともかく、沙織のいなくなった家はどこか陰気くさかった。
それがいま、薄化粧して目の前に立っている。

ほんのわずかの間離れただけだったが沙織の放つ濃密な色気に引き寄せられるように新三郎の視線は豊かすぎる乳房を射止めた。
着やせをするたちで、ベッドに誘って目にした乳房も下腹部も豊かすぎるほど豊満だった。
いつの間に床を別にし始めたのか記憶をたどらなければ思い出せないほどだったが、わずかの間 離れて暮らし 初めて湧き上がる飢えを覚えた。

その飢えには沙織が自分といない間にほかの男に組み敷かれ、身体を開いて受け入れ狂喜しのけぞり悶え苦しむ姿が頭の片隅に焼き付いて離れない。
「そうか・・・  納得してくれたか」
一旦云い出したら後に引かない夫である。

拒んでもいつか必ず調べると言い出すし、結果によっては裁判沙汰になる。
そのあと円満解決する、或いは離婚となるにせよ世間の物笑いになる。
それなら多少の分別がある自身が内密に検査という方法をとらせた方が得策だと沙織は考えた。

よしんばかたくなな考えが胤のない子供を育てることを拒否するため裁判に持ち込まれたとしても職業上不利になるような態度には出まいと踏んだ。
他人の子供を知らずに育て続けた屈辱に比べれば調査という申し出は仕方のないことだと諦めもした。

新三郎にしても沙織がから同意を取り付けたといっても一度は拒んで家を出ている。
生まれた子供に関して絶対揺らがない信念があるからこそできた所業だと思うだけに自信がぐらついた。
----そんなはずはない。かつて研究チームにいてこれはと思った題材の芯を外したことは一度たりとてない。

新三郎は自身に言い聞かせた。
思いつく限りの参考書をひも解いて調べ上げたつもりだった。
DNA鑑定のみならず血液のABO型、Rh型にMN型、それらすべてを考慮に入れた答えが自分の胤ではないという結論を導き出している。

ふたりの子供の父権が否定されたら沙織はどうするつもりだろうかと思った。
不貞を理由にすれば即座に離婚が認められるだろう。その時になって沙織は定説の陰に隠れて不倫を繰り返した、その男の名前をどんな気持ちで打ち明けるだろう。
新三郎は黙って沙織を見つめた。

沙織は一礼して踵を返した。
その沙織の肩を掴んで引き戻し無言のまま床に押し付けた。
沙織はあらがわなかった。

瞳を閉じて横たわった。
新三郎は部屋に鍵を掛けた。

子供たちや両親は不振がるかもしれないが、そのことへの配慮より脳内を駆け巡る沙織を凌辱してあざ笑う男達への嫉妬に対するた昂りのほうが勝った。
着物の裾を捲ると男達が弄り尽くしたと思われる白い下半身が現れた。
この段になっても両腿をぴっちりと閉じて見た目にも夫の侵入を拒み続けている様子を見てとれる。

怒りと嫉妬がないまぜになり、それが頂点に達した。
軽く手をかけてやさしく手をかけて引き下ろすつもりでいたパンティーを引き裂いた。
それでも沙織は動かなかった。

白い透き通るような下半身の奥にそれをひた隠そうとするかのような繁みがあった。
人妻を寝取る輩の手練手管を本で学んだ際に前戯とあったが、かつてこのようなことを妻に行ったことはない。
新三郎はその下半身を割って覆いかぶさった。

もとより前戯も何もなかった。
他の男たちがこの場所へ向かって注ぎ込む情熱に沙織はもだえ苦しんだかと思うと復讐の念に黒い炎が渦巻いた。
自分の時とは違って沙織は自ら進んで美しい足を開き男を迎え入れた。その今組み敷いている個体とは違った妖しい肢体が男の身体に絡みつき露わな声を張り上げる様子が目の前の暗闇に映し出された。

強引に侵入した新三郎はあっという間に自分だけ果てた。
沙織の中に放った瞬間、欲望は果てたが目の前の妻の情事のあとの下半身を見て益々疑念は強まった。
検査結果が悪い方に出た場合、沙織と離婚することになるが、元はと言えば男として自分がふがいないからであって不貞を働いたからと言って果たしてこの美しく魅惑的な妻と別れる決心がつくかと一抹の不安を覚えた。

欲を言えば妻だけ残し、父権は胤を仕込んだ男に送りつけてやりたかった。
だがそれは法的にもできるわけはなかった。
母親はどうしても親権を持つことになる。そうすれば沙織は胤を仕込んだ男の元へ子供もとともに送り出してしまうことになる。

検査の結果が自分の胤であってくれたらという気持ちが脳裏をかすめた。
そうすれば疑心暗鬼の日々は消え、元の穏やかな家族に戻れるし例え育ての親であっても父母も喜ぶと思われた。
だが、そうでないことは調べるまでもなく明白の事実ということも。

旧正月が空けると新三郎は研究機関に夫婦と子供たちの鑑定を依頼した。
「こうまでなさる確固たる理由はおありですか?」
新三郎はこの問いに自分が探り当てた研究結果と妻の行動記録を添えて説明した。

「おっしゃりたいことはわかりました。しかしながらあなた様も高名な研究員、とすれば結果は調べずとも明白なはずで、我々の結果を待たれるもの良いですが無駄に時間を費やされるより探偵を雇われてそのあたりを調査されることをお勧めしますよ」
「探偵をですか?」
「そのとおりです。精子は膣内で3日は生存しますから、あなた様の日記に記された奥方様の妊娠可能周期から計算した日に誰か男と接触を持たれたか調べ、その男のDNA鑑定を依頼なさるともっと効率よく回答を差し上げることができます」

なるほどと思った。
神聖な研究機関の職員なればこそ、主に不倫や浮気調査が主な仕事の探偵屋を雇うという思い付きは門外でなかった。
「どこかにお知り合いでも・・・」
頭を下げて紹介を受け研究所を出る段になってどっと疲れが出た。

何故こんな屈辱的なことのために走り回らなければならないのかと思った時、わけのわからぬ子を孕んだ沙織が無性に腹立たしかった。

その夜は久しぶりに親子そろって料亭で外食をした。
沙織の表情は明るかった。
目の前の我が子の胤を父が疑ってかかっているという罪悪感というものが一切窺われなかった。

どこかの男と逢瀬をもって孕んだとすればこのように明るくふるまえないはずだが沙織の立ち振る舞いに翳りは見えない、それを書斎で契った一夜のことで帳消しと考えてはいまいかと疑ってもみ、もしそうであるならばなおさらのこと手放すには惜しいと思った。
「あなたお酒の追加はどうなさいます?」
ぼんやりと子供たちを見やっている脇で沙織がくったくなく問いかけてきた。

「ああ、もらおうか」
もしかしたら早まったかもしれないという懺悔で胸がいっぱいになったが、次の瞬間目の前を横切った妻の豊かな尻の線に打ち消された。
あの嫋やかな尻をほかの男が鷲掴みにしながら妻を組み敷いて頂上まで昇りつめさせ孕むことさえ許すまでに寝取られてしまっている現実に、再び恨みつらみがふつふつと燃え上がりはじめていた。




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